2012年09月28日

帝王学「貞観政要」の読み方  山本七平

いい本でした。
前回の、武器の本とまったく対照的。
こういう中国この古典書の思想には大国を運営するためのリーダーの哲学が詰まっている。

帝王学―「貞観政要」の読み方 (日経ビジネス人文庫)


この貞観政要という書物は中国の唐の時代のもので、
皇帝・太宗の貞観の治がいかにして成ったか、
政治の要点について書かれている。
日本では、頼朝や北条氏、家康が影響を受けたとされる。
事業の創業よりも、その後の事業、組織の維持・発展の難しさに対する経営論・リーダーシップについて書かれていて、江戸幕府が長期間に渡って維持できたことも、この貞観政要の影響とみられている。

書かれていることは、特に難しいことではなくて、一般的なリーダーシップ本にもある程度同じようなことがある。

そもそも昔の社会では、絶対的権力は一人の人間に集中していた。
しかし、伝統的社会の帝王は決して無限の権力を振るい得なかった。
多くの権力者は、神との契約や天からの命によって帝王となっているのであって、
聖人としての道を外れてしまったら預言者や諌臣(中国ではこのような役職を諌議大夫という)によって糾弾される。

それでも権力は人を変える魔物であり、多くの権力者が道を誤ったが、
要は、そういう自覚を持って自制し、周りからのアドバイスに謙虚に耳を傾けられるかどうかが重要。
兼聴=多くの人の率直な意見に耳を傾け、その中から、これはと思う意見を採用すること
偏信=一人のいうことだけを信用すること
権力を持てば、誰でも偏信になっていくが、これを自戒する心構えが必要。
周りにイエスマンばかり置いても意味がなく、意見は多いほど良い。
集合知にも通じる。

十思・九徳の心構え。
これがあれば、上司も部下も組織で最大限能力を発揮できる。

組織がうまくいき、問題が発生しなくなってくると、
いわば「統治されている」という意識さえ持ち得なくなっていく。
自由や、平和、安全などは空気のようなものだから、
それがが確保されているときは人は意識しないし、これが不可欠の前提で、
この前提を創出して維持してくれている人は誰だろう、などとは考えない。
簡単に言えば、リーダーは「感謝しろ」といった意識を持ってはならない。

六正・六邪の人の見極め方。ビジョナリーカンパニーの適切な人材の登用と同じく。

虚栄心を自制する。
必需・常需には限度があり、満たされればそれでよいが、
それを超える虚需には際限がない。権力者は自ら戒めない限り膨張していく。
さらにそれは部下にまで伝播していき、虚栄心の多い人間でとりまきができる。

部下の心構え。
嗜欲喜怒の情は、賢愚皆同じ。
違いは⇒賢者は能く之を節して、度に過ぎしめず、愚者は之をほしいままにして、多くを失う。
「義」と「志」が忘れられた現代。

栄貴よりも徳行。
権力や社会的地位はその人間が生きてその力を振るいうる限りのものでそれ以上の影響力はない。
ある人物の死後、人々は何でその人物を量るのか。
権力でもなく、社会的地位でもなく、いわば「人格的な力」である。
ドラッガーの言葉で言えば「品性」。
その人物が後世に遺しうるものは「高尚なる人格に基づく生涯」だけである。


組織のリーダーとしての資質について書かれた本では、
文庫本200ページちょっとで満足感のある一冊。
1983年に刊行された本ではあるが、そもそも長い歴史にさらされて残ってきた古典書を題材にしているので、
その本質が30年やそこらで時代に合わなくなるというのも考えにくい。

さらに面白い指摘がある。
現代は民主主義であって、「民衆」が「主」なわけである。
権力は分散するが、裏を返せば多くの小帝王を生じうるということでもある。
さらに、現代で最も大きな権力を握っているのは「大衆」かもしれない。
権力を持てば誰でもその魔力に道を間違えるが、
「大衆」という権力は常に責任の所在がない。
責任を負わないということは、リーダーに必須の自制心を喪失することであり、群集心理の恐ろしいところ。
その大衆が権力を握り、「大衆=帝王」となればどうなるか。
それは人類史上最悪の暴君かもしれず、これは現代が抱えている最も難しい問題かもしれない。

まさしくタイムリーなデモや暴動とか、そのまま当てはまる。
この本の冒頭には、現代に最も必要なものは「帝王学」かもしれない、とある。
複雑な仕組みの現代社会では、一人ひとりがリーダーの資質、
自制心、人の言葉に耳を傾ける謙虚さや素直さ、義や志などなどについて学ぶ必要がある。


ゲリラ戦を生き抜くための一冊も確かに面白いし確かに必要なことが書かれているけど、
人間の本質を問うようなこの一冊の方がより沁みる。

父が自分の会社でどういう仕事ぶりだったのかはまるで見れないままではあったけれど、
聞こえてくる話ではこの本に書かれているようなリーダーシップもあったんだと思う。
そして、父の人格的評価が高かったからこそ、死後も忘れられず敬意を寄せられる。多少の差はあるだろうけど。
父の権力や社会的地位は息子には伝わらないけれど、人格的評価はそうじゃないかもしれない。
愚息にならないように自分も徳行を積もうと思う。



そんでこの本がアツイ!グイグイ引き込まれる。
posted by koji at 12:28| 大阪 ☀| Comment(1) | TrackBack(0) | リーディング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Posted by ロモラオ at 2012年10月01日 16:22
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