2013年06月19日

やさしい醸造学 抜粋そのB ビールA

ビールの香味成分はほとんど醗酵中のアミノ酸代謝に関連して形成され、酵母の増殖期に起こる。しかし、そのほとんどすべての成分のビール中の存在濃度がその弁別閾値より小さい。
代表的な高級アルコール類と呼ばれるプロパノール、イソブタノール、イソならびに活性アミルアルコールなどは、主としてアミノ酸の脱アミノ反応によって生成される。
特にバリンはロイシンやイソロイシンのあとに取り込まれるアミノ酸で、ビール中に残存する割合が高いアミノ酸である。
ビールの香味評価を低下させるダイアセチルはビール中の含有量がその弁別閾値に近く、その素材となるアセト乳酸はバリンの代謝と関連している。アセト乳酸濃度は、醗酵中のアミノ酸消費が旺盛でバリンが消費し尽くされてしまうほどであっても、逆に低調でバリンが多く残るほどであっても、顕著に高くなってしまう。アセト乳酸濃度は熟成の所要期間を決める重要な指標であるので、残存アミノ酸濃度、バリン濃度が一定になるように醗酵を管理することがいかに重要であるかよくわかる。

果実臭などのエステル類のビール中の濃度は弁別閾値と近い。酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、カプリル酸エチル、カプリン酸エチルのような構成分子は炭素数がわずかに違うだけで同じ構造であり、匂いの質が似ているため、匂いの強さはそれぞれの総和に比例してくる。
酢酸エステルは、TCAサイクルが回らなくなり、アセチルCoAが蓄積することにより生成が始まる。一次醗酵の後半期、酵母の増殖が定常期に入りかけた頃からその生成が始まり、醗酵が長く続けば続くだけ多く生成される。
麦汁中の溶存酸素や不飽和脂肪酸の濃度が高い条件では酵母の増殖が長期に続くのでエステル類の生成は少ない。また、麦汁中の不飽和脂肪酸の濃度はその混濁度と相関が高いので、透明度の高い麦汁はエステル生成により適していると言える。
酵母が弱った状態で醗酵を続けると多く生成されることが観察されており、吟醸酒づくりの条件と似ている。

一次醗酵後期では、麦汁中には酵母の利用できる酸素は存在しないので、酵母は麦汁中の酸素に代わるあらゆる化合物を利用し始める。
酵母にとって酸素の役割は、エネルギーを体内でつくる過程から生じる酸素を体外に排出するための水素との結合相手であり、水素と結合できるものであれば何でも酸素の代わりとなる。
そこで、アルデヒド類やケト酸類は再び取りこまれて水素と結合=還元していく。
硫化水素やアセトアルデヒドなどの沸点の低い生産物は、炭酸ガスによる洗浄効果により揮散して濃度を低下させる。
ダイアセチルの前駆体であるアセト乳酸は、この時期には自然的な分解反応のみが進行しており、その結果生ずるダイアセチル、アセトインも水素と結合してアルコール類となる。これが見かけ上、アセト乳酸が酵母によって消費されていくように観察される。
この熟成の時期での諸反応は変化されるものの濃度がごく低いため、高濃度の酵母は必要なく、次回の醗酵のために活性のうちに回収する必要がある。また、酵母の死滅はビール品質を損なう原因となるため速やかに若ビールから分離する。

反面、アルコールの生成は酵母の増殖とは無関係に醗酵全期間を通して行われるので、香味成分の管理には不十分であり、酵母の増殖状態=アミノ酸代謝によって管理する必要がある。

一次醗酵後期に温度を高める、冷却開始時期を遅らせると、これらの熟成反応を促進することができ、シリンドロコニカルタンクの普及以来用いられている。
アセト乳酸濃度が一定値以下でビールは急冷される。
シリンドロコニカルタンクは、冷却ユニットが直接タンクに巻きつけてあるので、若ビールの温度の変更をより自由にできるためこのような熟成促進法ができる。
ビールの熟成中の反応のうち、アセト乳酸の分解は最も進行の遅い反応であるため、この分解を速めてやれば熟成期間全体を短くすることができる。

シリンドロコニカルタンクは、建設コストが安く、作業環境がよく、冷却効率もよい、敷地面積も少なくてすみ、自動洗浄が可能なシステム。
深さ10〜15mにもなるこのタンクの形状が酵母に与える影響は、何よりその深さによる圧力の影響がある。
アルコール醗酵力よりも、酵母の増殖力により大きな影響を与える。したがって、アルコール醗酵は順調に進行していても、酵母の増殖は抑えられているため、香味成分の生成度合には顕著な影響が出る。
むしろこの差を商品特製として、アルコールは高くとも香味成分の少ないあっさりしたビールを作りだす。

若ビール中は、酵母が水素が与えられるものはすべて与えられているため非常に還元的=酸素欠乏状態である。
ポリフェノール類やメラノイジンも還元されて赤みが消え、ピルスナー特有の黄金色はこの段階でできあがる。
二次醗酵中には、酵母の死滅が始まりアミノ酸や核酸が溶け出してくる。これらはうまみのある成分なのである程度の溶け出し=自己消化は香味の熟成にプラスであるが、過度になると清涼感を損ない酵母臭となる。
pH値も上昇しタンパクやタンニンが再び溶け、これらは香味を低下させる。

ビールの苦味成分はイソフムロンがその代表的なものであるが、ホップ中には似た性質を持つ数々の類縁化合物が存在する。ビールの苦味は、すぐに口の中で消える。ホップの苦味成分は単独でビール中に存在するのではなく、タンパク質などの高分子と結合して存在しているため、苦味を感じる舌の味蕾のタンパク質と強く結合することがない。このためキレの良い苦味が成り立つ。

ダイアセチル臭は、乳酸菌が工程中で汚染した時に出現する。漬物臭やチーズ臭的な匂い。
カビ臭は原材料、王冠栓、コルクなどから来る。
未熟臭は、ダイアセチル臭の他、アセトアルデヒドのグリーンなにおい、すっきりしない蒸れた臭いの硫化水素臭などがある。
ポリフェノールを脱炭酸する能力のある異種酵母が汚染してスモーク臭がつく。
これらは新鮮なビールでも検出される。

古いビールでは、酸化臭、日光臭など。
長期の保存で酸化が進むと、カードボード臭、その後醤油のような臭いが強くなる。
ビールに光が当たると、タヌキやキツネなどの臭いがする。イソフムロンが光によって分解したあと、ビール中の硫黄化合物と反応して3−メチル−2−ブテン−1−チオールを生成する。

ビールの泡は、ジョッキの中でビールの蓋の役割を果たし酸化による変質を防ぐ。
泡の部分は、高分子のタンパク質とビールの苦味質であるイソフムロンの濃度がビール中の値より高い。これら両者が結合して泡を安定化させる表面活性物質を形成する。
ビールの粘度は泡持ち性と非常にきれいに連動する。ビールの粘度は麦芽由来のグルカン含有量によるが、グルカン含有量が高いと麦汁やビールは濾過しにくくなる。
濁った麦汁は脂質の含有量が多く、泡持ちが悪い。醗酵の際にできる泡が多いと泡タンパクが減少するので製品ビールの泡持ちが悪くなる。

上面醗酵では醗酵温度が高く、泡を酵母回収のために取り除くため、泡持ちは非常に悪くなる。
小麦麦芽はタンパク質の分解が少ないので、色は淡く、高分子タンパク質が多いため泡立ちが良い。

窒素ガスは炭酸ガスに比べてはるかに水溶性が低いので、窒素ガスの泡は非常に安定している。
窒素ウィジェットは、内部に窒素を封入したプラスチック製のボールのようなもので、缶を開けると圧力差によって内部から細かい窒素の泡が吹き出す。
posted by koji at 11:51| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | ビール | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月12日

やさしい醸造学 抜粋そのA ビール

麦芽には、ビール大麦と呼ばれる大粒の大麦が多く用いられる。特に二条大麦が多い。
発芽させるために、収穫やその後の取り扱いは慎重に行われる。早刈り、胚にダメージを与える脱穀、乾燥などは発芽力を低下させる。
畑での倒伏などによるカビの汚染もビールの品質を低下させる。
したがって受け入れ検査は現住にされ、収穫された大麦のうち品質の良い一部のもののみが麦芽製造に回され、その他は飼料用等になる。

製麦は、浸漬、発芽、乾燥の3工程。浸漬に先立って粒の大きさをそろえるために選粒する。発芽の進行をできるだけ揃えるためである。
浸漬は水分含42〜45%になるまで行われるが、大麦の呼吸が盛んになるため、間欠的に水を切って通気する。
発芽は通常4〜6日かけて行う。幼芽が大麦粒の長さの3分の2程度になる。
乾燥は、酵素が熱で失活しないように、まず通風のみで水分を低下させ、その後温度をあげていく。ピルスナーの麦芽で82〜83℃で3時間ほど乾燥される。
最後に幼根を取り除かれる。

麦芽が水分を吸収し発芽をはじめると、胚において植物ホルモンの一種、ジベレリンが合成される。これが水分によって運ばれてアロイロン層に達し、それが刺激となってアルファアミラーゼなどの酵素合成を開始する。

発芽中は、酵素が生成するだけでなく、デンプンを含む胚乳も分解されやすい形に変質する。細胞壁や細胞間物質が分解されるてデンプン粒がほぐれてくることを「とけ」といい、発芽工程の管理はこの「とけ」の評価により行われる。
細胞壁や細胞間物質が分解されると、粘性のあるグルカンなどの多糖類となり、麦汁のろ過を左右するので重要である。
麦汁中のアミノ酸の約3分の2は製麦中に生成され、糖化工程ではむしろ少ない。

醸造用水の性質はビールの品質と密接に関係している。
容器へ詰めたあとも酸化の原因となる鉄イオン。珪酸イオンも酵母の醗酵力を低下させる。
逆に亜鉛イオンは酵母の醗酵力を強化するので、高濃度麦汁を醗酵させるときなどには強化する必要がある。
塩素イオンは香味をマイルドにし、硫酸イオンは辛口にする。
ミュンヘンで作るピルスナーは、重炭酸イオンの多い=一次硬度の高い水であったため、もろみのpHを高めて、麦芽の殻皮からタンニン成分などを多く溶け出させるとともに、麦汁煮沸の工程でアミノ酸と糖とのアミノカルボニル反応を促進し色を濃くする。
ピルゼンでは、一次硬度の低い軟水を使ったため淡色のピルスナーができあがった。
また、硬水であっても、硫酸カルシウムなどを多く含む水=永久硬度の高い水を使った場合には、麦芽に由来するリン酸イオンと結合して不溶性となりpHを低下させるのでビールの色は淡色でしまった味のビールとなる。

ホップは、受精させると精油の成分が悪くなるので雄株をすべて排除され、未受精のまま成長させる。黄色い油滴状のルプリン粒が形成され、これに苦味のもととなる樹脂と香りを与える精油が含まれている。

上面発酵酵母と下面発酵酵母とが区別されているが、区別のもととなった相違点はラフィノースという3糖類に対する醗酵性で、前者が3分の1しか醗酵できないのに対して、後者は全部醗酵できる。
下面発酵酵母は、上面発酵酵母とシェリー酵母との両方の特徴を有する。

麦芽の粉砕は、なるべく細かくなされた方がデンプンの糖化は効率よく行われるが、糖化後の麦汁のろ過速度が遅くなる。
特に殻皮はろ過材になることとタンニン類などの溶け出しを抑えるために、なるべく細かく粉砕しないようにしておきたい。さらに、胚乳区分も残存している細胞壁や細胞間物質を形成する粘性のある多糖類がろ過を妨害しないように、なるべく細かく分散しないようにしておきたいため、粗挽きの状態で糖化槽に入れられる。
製麦で「とけ」がよく進行していれば粗挽きでも充分デンプン粒は溶け、エキスは順調に得られる。

上面発酵では、1つの釜でだんだんに温度を上げていくインシュージョン法が多く用いられる。
対して下面発酵では、デコクション法という方法を採る。2つの釜をつかって一部を低温で保持し、一部を煮沸、これをまた合わせて温度を上げていく方法である。
酵素活性を最大限に引き出すために、酵素が熱変性してしまう温度と非常に近い温度で管理される。
大麦中には2種類のデンプンがあり、片方のデンプンの糊化温度が61〜62℃の大粒デンプンが90%、他方は75〜80℃で糊化する小粒デンプンが10%。この小粒デンプンは、デコクションでの移し替えにより煮沸されたマッシュの中のものだけが糊化される。しかし、そのマッシュの中の酵素は熱によって失活しており、もとのマッシュと合わされることによってのみ糖化される。
できあがった麦汁は、麦芽糖が醗酵性糖の中の大部分を占め、全エキス分の中の醗酵性糖の割合は60%となる。アルコール醗酵されずに残るエキス中の大部分はデキストリンが占める。

麦汁が冷めて粘度が上がらないように、熱いうちにろ過される。麦汁の濁り成分は脂質含量が高く、泡持ちや香味の安定度に影響し、醗酵の進行にも影響するのでできるだけ透明な麦汁とする。
マッシュのエキスが大部分抽出されると、ろ過層には新たにお湯が通されて残りのエキス=二番麦汁が抽出される。二番麦汁は麦汁のpHを低くするアミノ酸や酸がだんだんなくなってくるため、pH値が高くなってくる。そのため、殻皮からタンニンが溶け出してくるので、ある程度の糖度まででやめる。

ろ過された麦汁には、ホップが加えられ煮沸される。
ホップは苦味、ホップ香の付与、ビール乳酸菌汚染の防止、泡持ち性の向上など重要な働きをする。
激しく煮沸対流させることによってそれ以外に、酵素の失活、タンパク質の熱凝固による清澄、殺菌、臭気の揮散、アミノカルボニル反応による色の形成などの目的がある。
銅釜の場合には、麦汁中の硫黄化合物が取り除かれ、香味がすっきりする。

ホップの苦味成分は、煮沸されることによって初めて苦味を有する物質に変化する。その代表的なものはα酸のフムロンという化合物であり、イソフムロンという物質に変換され苦味を呈する。
α酸はもともと樹脂であるのでその水溶性は大きくない。麦汁中に存在する各種の成分と結合してビール中の濃度はだんだん低下していく。製品ビールには、使用したホップのα酸全体の30%程度しか移行しない。

ホップの香りは、ルプリン粒内に存在する精油成分に由来し、各種の炭化水素化合物、テルペン類からなる。水溶性に乏しく、麦汁中で煮沸されると水蒸気とともに大部分が揮散するが、保存中などに酸化して変質すると、親水性を持ち揮散しにくくなる。

ビール醸造では、他の醗酵工業の場合に比べて高濃度の酵母を接種に必要とするので、大量の酵母を活性の高い状態で保存している必要がある。

ビール乳酸菌の汚染があると、2次醗酵タンクへ移行し、若ビール中で増殖し変質を招く。最初は蒸れた臭い=ダイアセチル臭の発生であり、汚染が進むと酸度の増加、ビールの濁りが発生する。

煮沸された麦汁は冷却され、下面発酵では5〜10℃、上面発酵でも15〜20℃にされる。この冷却によりさらに混濁が生じ、脂質含量が高く、特に不飽和脂肪酸が多いので醗酵異常、泡持ち低下や香味の変化の原因となるため除去される。

酵母が添加される前には、麦汁に酸素が供給される。この過程での麦汁はホップが添加されているとはいえ、栄養分が十分にあり、pHも高く、酸素も供給されているので雑菌汚染のリスクが高い。
一次醗酵で酵母は約4倍に増殖する。この為には、麦汁に一度空気を含ませただけでは充分ではないので、再度の通気が酵母添加後しばらくしたころに行われる。
高濃度の麦汁を直接醗酵させる合理化法の場合には、空気ではなく純酸素が利用される場合が多い。

醗酵が始まるとともに熱が発生し温度が上昇する。10時間ほどの適応期の後、増殖し、3〜4日間で終了し、このころから酵母細胞同士の凝集と沈降が始まる。

酵母による糖の取り込みは、まずブドウ糖から始まる。浸透による取り込みから、エネルギーを消費して行う能動輸送まで積極的に取り込まれる。
ブドウ糖を消費しつくしたあと、麦芽糖の醗酵が始まる。下面発酵酵母は、麦芽糖にもう1分子ブドウ糖が結合した3糖類マルトトリオースまで醗酵可能であり、麦芽糖の醗酵にやや遅れて進行する。
二次醗酵が終わった最終製品ビールの残存エキス分の大部分は4糖類以上の高分子のデキストリンが大半となり、その他にタンパク質が少量残る。これがビールのコク味に関係する。

麦汁中に存在したアミノ酸の半分から3分の1は残存するが、残りは、酵母の増殖のために摂取される。アミノ酸の減少により、麦汁のpH緩衝能が低下しpH値は低下する。

また、酵母の増殖期には、有機酸の生成によるpH値低下も起こる。これは、呼吸系の活性が遺伝的に弱くTCAサイクルが充分に回転しないため、解糖系の下流でピルビン酸やアセチルCoAが滞留し、乳酸や酢酸に変化するためと考えられている。醗酵温度が高いと乳酸が、低いと酢酸が多く生成する。pHの低下によりビールの雑菌汚染リスクは大きく減少する。



posted by koji at 15:05| 大阪 ☀| Comment(5) | TrackBack(0) | ビール | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月11日

やさしい醸造学 の抜粋その@

結局、図書館で借りてきた本なわけですが、「やさしい」と書いてる割にかなり細かく醸造全般について書かれています。
そして著者が大手ビールメーカーの人物のため、その大半をビール醸造について書かれています。
もちろん大手が作る大量生産ピルスナーの製造についてが多いのですが、それ以外でもかなり基礎的な部分について記述が多いので、自分用のメモとして抜粋します。





胚乳の中にはデンプンが詰まっている。
デンプン粒は結晶構造をしたデンプンからできており、煮沸されることによりその構造が崩れて、麦芽や麹菌の酵素に分解されるようになる。これを糊化。

胚乳の一番外側には、種皮・果皮・アロイロン細胞という3層の細胞層が存在する。
このアロイロン細胞は、発芽に際して胚乳の成分を分解する酵素を生産する役割を果たす。
タンパク質、ビタミン、塩類などの栄養価に富み、糠を構成する成分。アルコール醗酵においては、多くの酒類の醸造に際してこの成分はあまり歓迎されない。味噌や醤油の醸造においては逆に必要となる。

ポリフェノールは、製品の保存や熟成期間などに変化し、着色の原因、タンパク質との結合で混濁を形成する。
この反応は自然に発生するが、麹菌や麦芽がもつポリフェノール酸化酵素によっても促進される。が、この酵素は酸素がなければ働かない。
ポリフェノールの一種、フェルラ酸は、ある酵母の酵素によって変化し、4−エチルグアヤコールという物質になり、スモーク臭、フェノール臭を与える。

水質に鉄分が含まれると、醸造物の最後の製品化の段階で酸素に触れ、製品が酸化されて変質するのを促進する。色、香味の変化、濁りの発生など。

カルシウムや重炭酸塩類はもろみのpHに影響を与える。
ビールは4.2程度の酸性、ワインで3.2ほど。
同じ栄養分があっても、pHによって生育する微生物が違い、それにより醸造物の香味も違ってくる。
酵母や麹菌は酸性条件下でよく生育する。細菌類は酸性に弱いものが多い。中性に近いと、アミノ酸を分解して異臭をつくる細菌類が繁殖し香味が悪くなる。

アルコール醗酵を行う酵母は酸素のないところでも生存でき、酵母の中ではまれなものである。
麹カビは酸素のあるところでしか生育できない。菌糸の先に、頂囊という膨らみを作りその先に分生胞子をつくる。この胞子は、細菌類の胞子と違い耐熱性がない。

微生物の増殖は、まず適応期があり、この間で細胞内の態勢を整える。だいたい1世代の増殖に要する時間程度である。ただし、微生物の活性が低下していれば適応期が長くなる。
その後、倍、倍と増えていく。これを対数増殖期と呼ぶ。この期間に、細胞内で各種の物質変化=代謝が盛んに行われるので、各種の生成物が細胞外に出てくる。これが醸造物の香味成分となる。
その後、栄養分がなくなり、排泄物がたまる、微生物数が多すぎると増殖は止まる。これを定常期と呼ぶ。
この期間には、細胞内に貯蔵物質を蓄積するが、環境がさらに悪化するとその貯蔵物質を消費し始め、それもなくなると死滅が始まる。さらに、細胞膜が働かなくなり、自らの分解酵素によって細胞内成分の分解と溶出が始まる。
醸造物のなかでは、これがアミノ酸や核酸、ビタミンが増える原因となる。

通常、生物は、呼吸によってATPを作る。解糖系、TCAサイクルで脱水素、脱炭酸、酸化的リン酸化を経て完全に分解されると、最終的に水と炭酸ガスになる。
アルコール醗酵を行う酵母菌の場合は、TCAサイクルにまで入って分解される養分の量がごく少なく、その手前の解糖系で得られるピルビン酸がアセトアルデヒドまで分解され、エチルアルコールにまで変換される経路が非常に太い。
なので、酵母の場合、糖が分解されて得られるATPはブドウ糖1分子あたり2分子のみであり、TCAサイクルで水と炭酸ガスにまで完全分解されて38分子のATPが生成されるのに比べると非常に効率が悪い。
そのため、酸素がある環境で糖を完全分解=呼吸できる他の微生物が入ってくるとそちらが優勢に増殖し、酵母は働けなくなってしまう。
雑菌の侵入を防ぐことと、酸素を必要以上に与えないようにするのはこのためである。
ちなみに酢酸菌はアセトアルデヒドを酸化して酢酸にする力が強く、エネルギー生産効率も酵母や乳酸菌より高いため、アルコールを酢酸にまで酸化してしまう。

酵素はタンパク質である。
アミノ酸がペプチド結合をつくり鎖状に繋がったもので、立体的な構造をしているが、この構造が酵素としての作用を生む。この構造が変成すると酵素の作用はなくなってしまい、失活する。
麹菌や麦芽の酵素は、細胞の外へ出て働く特別なものである。
細胞内の酵素は、細胞内の環境がほぼ中性であるので中性でしか働かないが、特に麹菌の出す酵素は、清酒醸造用のもろみのような酸性の強い条件下でも働くことができる。

醸造用のアルコール醗酵性酵母は糖の醗酵力が特に強く、パスツール効果(酸素があると呼吸をし、ない状態では醗酵をするという代謝の切り替えを行う性質)をほとんど示さず、酸素がある環境下でもアルコール醗酵を行う。

麹菌はデンプンやタンパク質を分解して低分子化する性質が特に強い。分解産物である糖やアミノ酸は、本来的には麹菌に取り込まれて栄養分として利用されるはずのものであるが、清酒醸造の場面ではそこに酵母菌を存在させて、麹菌が自分のために生成した糖類を酵母に横取りさせてアルコールを作らせる。

糊化されたデンプンは、ブドウ糖が互いにつながった位置から、酵素によって細かく切断されるが、それぞれ違った酵素が関係する。

アルファアミラーゼ。長いデンブンの分子を大雑把にぶつぶつと切断。液化酵素。麦芽のアルファアミラーゼは耐熱性が高い。切断されて低分子化したデンプンはデキストリン。

ベータアミラーゼ。デキストリンの端からブドウ糖を2分子ずつの単位で切り取っていく酵素。マルトース=麦芽糖を生成する。麦芽はこの酵素力が強い。麦汁にはこの糖が多く含まれており、醗酵させるために、麦芽糖に対する醗酵力の強い酵母が選ばれる。逆に麹菌はこの酵素の活性が非常に低い。ベータアミラーゼの耐熱性は高くない。このため、糖化の際の温度が正確にコントロールされていないと、糖分の生成率が悪くなる。

グルコアミラーゼ。デキストリンの端からブドウ糖を1分子ずつ切り離していく酵素。清酒用の麹菌はこの酵素の活性が強い。逆に大麦麦芽ではこの酵素活性が弱い。

リミットデキストラナーゼ。枝切り酵素。デキストリンが上記の酵素に分解されていくと、アミロペクチンからのデキストリンの場合には、枝分かれしているところでそれ以上分解が進まなくなるが、この分岐点を切断する酵素。これによりデンプンの完全な分解が行われる。この酵素も耐熱性が高くない。

酵母菌は糖分の多い酸性の液体の中では、ほかの微生物よりも優先的に増殖し、醗酵する。カビも酸性条件下や糖分濃度の高いところは増殖するが、酸素が十分にないと増殖できない。
酵母菌がアルコール醗酵を始め、糖液中の酸素を消費し尽くして炭酸ガスを発生してるところではカビは生育できない。
細菌類も酸素の少ないところで生育できるものは少なく、それ以上に酸性条件下で生育できるものが少ない。また、糖液中のような浸透圧が高い条件下では生育できない。このため、果汁やハチミツ液の中は特に酵母が優先的に生育できる。太古からワインなどは品質のよい酒ができやすかった。
これに比べると穀物からの酒造りは自然な方法で高い糖濃度を達成できず、雑菌の汚染を受けて、おいしく飲める酒をつくることは簡単ではなかった。
ワインは上流階級、ビール労働者階級の酒といわれた所以はこれであるとも言われる。
技術的に困難な穀物酒を作るということは古代においては一種の魔法のようにもみなされ、これが酒と神事のつながりになったという説もある。
中世ヨーロッパで専ら修道院でビールが作られていたのは、研究が専門的に熱心に行われていたことのほかに、炊事や育児のために果実や乳由来の野生の酵母菌や乳酸菌にまみれていた女性が修道院にはいなかったためとも言われる。たまたま酒造りに関わった女性が、前述のような理由で酒造りの不調との関連を咎められて、魔女にされてしまったという説もある。

ポリフェノールに乳酸菌の生育を抑える作用があることがわかっている。

嫌気的な環境下では、微生物は呼吸ができず生育は抑制される。しかし、この際に不飽和脂肪酸が与えられると酵母の生育が可能となる。不飽和脂肪酸が酸素の代役を果たす。濁った麦汁ほど脂肪酸含有量が高い。

窒素や硫黄を含む化合物は一般に匂いが強く、低分子で揮発性の高いものほど匂いが強い。また、反応性が強いのでより強い匂いを持つ化合物に科学的に変化する傾向も有する。
醗酵臭は、タンパク質やその分解物に微生物が作用したもので、腐敗臭に近い。酒類では嫌われる。
対して、炭水化物に由来する醗酵臭は穏やかなものである。
醗酵に際しての香味成分はわずかな例外を除いて、酵母が増殖をしている時期に生育し、増殖が終わると生育も止まる。

沸点の高い匂いの強い区分をフーゼル油と呼び、酒類の品質を左右する重要な成分である。高級アルコール類で、酵母によるアミノ酸合成の中間体としてか、脱アミノ反応によるものと2つの経路で生成する。
これらの高級アルコール類をもとにして、醗酵中には熟した果実様のにおい成分である酢酸エステル類が生成され、醸造物の品質と強く関係する。他に、脂肪酸のエチルエステルがあり、弱った酵母が醗酵する場合に生成される傾向がある。
アルデヒド類は容易にアルコールに還元されるため正常な醗酵ではその存在濃度は少ない。
乳酸菌が特徴的に作るにおいにダイアセチル臭がある。カラメル化反応によって化学的に生成する。

醸造物の中で起こる、アミノ酸と糖によるアミノカルボニル反応によりだんだん着色が進行する場合には、分子が簡単なものからだんだん複雑な大きな分子メラノイジンへと変化していくため、吸収される光の波長が増えていき色が濃くなっていく。
他に、ポリフェノール化合物がポリフェノール酸化酵素の作用により結合してメラニン様物質をつくる反応によって褐色反応が起きる。


箇所が多くて乱文になる。。読みづらくてすいません。また、そのA以降の投稿と一緒にレイアウト直します。
posted by koji at 18:25| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | ビール | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。